Chapter 2 成田空港
出発当日、僕は普段より早く起きた。
世間的な「早く起きた」は五時くらいだろうけど僕からしたら十時起床なんてあまりにも早い起床時間だ。
歯を磨き、顔を洗う。普段のことをしているはずなのに何かせかせかとしていた。
家を出るときもなぜかせかせかしていた。海外旅行に行くというよりも、何も知らない、何もみたことがない街へ行くという胸の高鳴りが僕の歩みを速くしていた。
空港へ向かう電車に乗る。窓から見える風景がどんどん田舎になってきた頃、キャリーケースを持つ人が複数人座っていることに気づいた。
彼らはどこに旅立つのだろうか。そんなことを考えつつ、まぁ僕達はLAに行くんですけどね、なんて思っているうちにターミナルに着いた。
荷物を預け、ぶらぶらしていると搭乗時間が来た。
歩く歩道を走りたいほど気分は高揚している。iPhoneを機内モードに設定すると同時に日本との繋がりが一時的に切れたような気がした。
飛行機が離陸準備を始める。エンジンがけたたましい音をたてる。 今抱えている問題、世間の同調圧力、未来への漠然とした不安 全てを置き去りにして飛び立った。
イヤホンを装着し、あらかじめダウンロードしておいた2PacのCalifornia Loveを聴く。 これから五日間 灰色の国から解放される喜びを身体中に感じながら。